病室移動日の前日。
父が明日のスケジュールを言い出すまで待っていると、父から「ひげを剃ってほしい」とのお願いが。
言われるまで気が付きませんでしたが、よくよく父の顔を見てみると相当ひげが伸びていました。
気が付かなかった理由は白髪だったからなのですが、これまでは1人で出来ていたひげそりすら出来なくなっていることを考えると、かなりしんみりとした気持ちになりました。
このとき、父はすでにベッドから体を起こすこともきつかったようですが、「起きていた方ががひげが剃りやすいだろ」と言って、上半身を起こしました。
支えにしている両手はブルブルと小刻みに震えています。
それを見ていると、ますます弱ってきたことを実感しつつ、ひげを剃り始めたのですが・・・。
電動シェーバーでひげを剃っていると、ボロボロと涙が溢れてきました。
以前より痩せ細った顔の輪郭を見ていると、もう悲しくてたまらないのです。
父はひげそりの最中、ずっと目を瞑ったままでしたが・・・、そんな痩せ細った顔の輪郭に沿って電動シェーバーを動かしていくと、父の衰えをますます実感せずにはいられず、どんどん悲しい気持ちに。
自分でも、「こんなに涙が出るものなんだ」と驚いたぐらい、大量の涙を流しました。
このとき、先に述べたように、「ひげそりすら1人で出来なくなった」という現実に対する悲しさもあったとは思いますが・・・、こういうときは否応なしに悲しくなるというか感情が抑えられないものなんだと分かりました。
自分がひたすら涙を流しながらもひげそりが終わると、今度は父が「体を拭いてほしい」とのこと。
上着を脱がせて体を拭くのですが・・・、これもはじめてのことで、なかなかどうやっていのか分かりません。
でも、何とか一通り体を拭き終えました。
すると今度は病衣を着替えたいとのこと。
病院から提供されている新しい病衣を手元に用意して、まずは上から。
そして次は下を着替えようとしたのですが、父からここで、「下半身に布団を掛けた状態で、自分で下を脱ぐから待って」との要望が。
自分に下半身を見せないように配慮したのと思い、父が自ら脱ぐのを待っていました。
が、この後5分経過しても、父はほとんど動かず寝そべったような状態のまま。
もうすでにズボンを脱ぐ力もないというか、ところどころ意識も薄れているような感じ。
そのため、自分が脱がすことにしました。
結局、布団を掛けた状態では脱がせるのも困難なので、そのままダイレクトに脱がしました。
で、これは最初は抵抗があると思っていましたが、実際にやってみたらほとんど嫌悪感はありませんでした。
こういう状況だと、「そんなの気にしている場合じゃない」のですね。
こうして父の着替えが完了しました。
この後。
父に明日のことを確認しようとしましたが、そこらへんの意識もあまりハッキリしない感じ。
受け答えは出来るものの、スケジュールなどを考えるのが難しいみたいなので、とりあえず父に、「じゃあ明日は8時ぐらいに来るから」と伝えると、「分かった」との返事が。
そして病室を後にしました。
次回につづく
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